『Tasty』ライナーノーツ
1. Intro : wip
Day1、生活の始まりを表現しています。
荒田Pと試行錯誤しているうちに自然に今の形になりました。
wipはネットスラングで「やりかけのもの」「制作途中のもの」といった意味です。
アルバム「Tasty」は、”甘い” “辛い” “苦い” “酸っぱい” など、私たちが生活の中で味わう様々な味覚を感情と絡めて音楽で表現したいという思いで制作しました。
また、裏テーマとして、アルバムを通して1日の流れを感じられるよう楽曲を配置しています。
まさに1日の始まりに相応しいイントロになったと思います。
2.Lazy
2016年頃から温めていた曲です。
当時私は”コードに凝った楽曲を作ること”に凝っていたのですが、少し力を抜いて純粋に音を奏でる喜びを感じられるような曲を作ってみよう、思ってピアノを弾きながら作った曲です。頭の中にはゴスペル隊が手拍子しながら歌っている様子を浮かべていました。
一方歌詞では秋の訪れの予感と不安定な恋模様を描いて、サウンドとのバランスを取りました。
そして意外にもkiki vivi lilyのキャリア初、バンマスMELRAW指揮の元、k.v.lバンドでのレコーディングを試行しました。
(スタジオの抑えからスケジューリングまでやってくれる心強いバンマス...頭が上がりません!そしてStudio Dedeさんのご協力にも感謝!)
「あーみんなで音を奏でるって楽しい!!」
作曲当初のテーマを体現できた素晴らしい体験でした。
3.手を触れたら
前作のEP「Good Luck Charm」の制作時から着手していた曲なので、やっと出来上がった!という達成感でいっぱいです。
もともとは、よりオーガニックで、Phum Viphuritの「Lover Boy」的なアプローチだったのですが、荒田くんやMELRAWとアレンジを進めるうちにだんだんと物足りなくなって、最終的にkiki vivi lily meets Dua Lipaな一曲に仕上がりました。
使ったことのない音色や、馴染みのない方法で楽曲にアプローチをすることは、未開の地に探索に出かけるようで、刺激的でワクワクしました。
硬めのサウンドとは裏腹に、歌詞ではピュアでストレートな甘さを表現しました。
4.Yum Yum ( feat. Shin Sakiura & Itto )
とにかくゴキゲンになれる曲です。
毎度アルバムにはゲストプロデューサーをお招きしているのですが、今回は音の解像度が高く洗練された印象が大好きなShin Sakiuraさんにお願いしました。Shin Sakiura印のギターが聞きたい!とリクエストをしてビートを組んでもらいました。
ラップは旧友Ittoくんにお願いしました。
IttoくんのPeacefulなマインドと気張らないスタンスがこのアルバムにぴったりだと思いました。
歌詞では、”ジャンキーな美味しさ”を感じられる楽曲にしたかったので、大好物のタコスとかのメキシカン料理のことを歌おうかな〜?とうっすら考えていました。
Ittoくんに「ジャンキーな味がする曲にしたい」とだけ伝えたら「ドリトス的な?」と返ってきて、全て通じ合えた気がしました(笑)
アルバムの中では一番遊び心を詰め込めた楽曲になりました。
5.Whiskey
アルバムに、ビターな旨味を与えてくれる大切な楽曲です。
以前からウィスキーをテーマに曲を書きたいという思いがあって、今回のアルバムのタイトルを決めた時に「今だ!」と思って書きました。
歌詞はiPhoneのノートに書いては消して、書いては消して、本当に大量の言葉から推敲して、物語のディティールを削りに削って、なるべく余白を残してシンプルに仕上げました。
曲の中でRobert Glasperのことを歌ってる場面があるんですが、「ここは本当にグラスパーでいいのか?」と最後まで悩みました。
お酒って、誰かに出会わなければ一生巡り合っていなかった銘柄もあったりして、だからこそ、その人との思い出とセットで記憶に残っていることが多いような気がします。
歌詞がシンプルな分、細かな情緒をトラック細部のグルーヴ感や余韻に詰め込みました。
ここでもプロデュース陣のセンスが爆発しています。
ベースはWONKの幹さんに弾いてもらいましたが、秒ですべてを理解して弾いてくれたので、完璧な布陣だったと思います。
6.Interlude : Tasty
ホテルに滞在しているときに、ふと思い立って作りました。
アルバムを通して色々な味覚を味わってもらう際、お口直しというか、場面の転換となるような短い曲があったら良いなと思っていたところ、急にアイデアが降ってきたのでそのままMacbook搭載のマイクで録音しました。が、なんとそのテイクをそのまま使っています。
すこし乱雑な音質とその瞬間を閉じ込めた空気感すら、味として楽しんでもらえたら嬉しいです。
7.You Were Mine
3年ほど前に書いた曲です。
ハワイアンレゲエと呼ばれるジャンルの音楽が大好きで、新譜をチェックしたりラジオを聞いたりしている中で、必然的に自分も作ってみたいと思いウクレレ片手に作りました。
ハワイアンレゲエは基本的にストレートな「愛してる」といったようなポジティブで甘い歌詞を乗っけていることが多い印象なのですが、あえて少しせつない歌詞を乗せることで、kiki vivi風レゲエに脚色することができたのかな、と思います。
ベースはSuchmosのHSUさんに弾いてもらって、最高のテイクをいただきました!
アルバムの中では異色な存在かもしれないですが、私の中ではあるべくしてある私の大好きな楽曲です。
8. New Day ( feat. Sweet William )
文字通り、新たな始まりの日を描いた一曲です。
Sweet Williamは、毎度彼にしか作れない妥協のないビートを組んでくれるので、絶大な信頼を寄せています。尊敬しあえる仲間が近くにいることは、本当に有難いことだと思います。
今回はループもののアプローチで一曲つくりたいね、というところからスタートしました。
一度彼の組んだビートをピアニストの宮川純さんに弾き直してもらって、再度Sweet Williamがその素材をバラしてビートを組み直すというプロセスで作りました。
サンプルと弾きのバランスの絶妙さが効いていて、大好きなビートです。
歌詞では、早朝の空港、大切な人を残して旅立つ光景を切り取りました。
コロナ状況下において、大切な人となかなか頻繁に会えなかったり、離れ離れになってしまったりした人も少なくないと思います。
この曲がそんな人々の背中を少しでも押せたらという願いを込めています。
別れの日であると同時に、ここから始まる旅路でのはじめの一歩でもある、そんな清々しさを感じとってくれたら嬉しいと思います。
9. Onion Soup
1日の終わり、大切な人を思って聴いて欲しい一曲です。
既婚の友人から、旦那さんと喧嘩したというLINEをもらったことをきっかけに作った曲です。愛し合って一緒になった二人でも、日々些細なことですれ違ったり、思ったように言葉を伝えられなかったりして、言い争うときもあるかと思います。でも、きっと二人は家族としてその日々を乗り越えて少しずつ強くなっていくんだなぁ、と友人の話を聞いて感じました。
そんな彼女をはじめ、愛する人と生きていくと決めたすべての方へのエールの気持ちも込めて歌にしました。
また、アルバム最後の隠し味として、初めて弾き語りでレコーディングをしました。
本気のTHE FIRST TAKEの緊張感とともに楽しんでほしいです。
最後に
このアルバムに関わってくださった全ての方に、心からの敬意と感謝を申し上げます。
荒田洸、MELRAWの二人がいないとkiki vivi lilyのサウンドは存在していません。
ほぼ全曲に渡りディレクションをしてくれました。
友人としてもミュージシャンとしても、愛してやまない二人です!
ここに書ききれていない制作秘話がたっくさんあるので、各媒体でしっかりお話できればと思います。
そして、kiki vivi lilyの楽曲を聞いてくださっているみなさん、いつも本当にありがとうございます。
皆さんがいるから、私はピュアに自分の愛する音を作ることができています。
見つけてくれてありがとう。
これからも、この気まぐれで自由な旅路にお付き合いいただけたら嬉しいです。
kiki vivi lily